2010-06-16 Wed
■ [Music] サニーデイ・サービス 『本日は晴天なり』
★★★★

東京の3人組バンド、サニーデイ・サービスによる2010年リリースの 8th。
再結成後の復活作になりますが、大きな感動がやってきたり、逆に拒否反応が出たり、といったこともなく、自然に聴けた作品でした。やはり、ソロ活動以降(とりわけ、自身でレーベルを立ち上げてから)の、曽我部恵一のキャリアがしっかりと取り込まれた、現代版サニーデイ・サービスとでも言うべき音楽になっていると思います。かつてのアナログな手触りを甦らせつつ、最後期(仲が悪かった頃?)の音楽性は微妙に避けた作りという感じですが、単純に焼き直したわけではなく、とろけるような甘い感触になっているところが、今のメロウさを持ってきているなと感じさせる。曲調はソロ名義の『LOVE CITY』などに近いものを感じつつ、シンプルであくまでも平熱な上品さを保っている曲調や、バタついてて乾いた演奏を聴くにつけ、ああサニーデイだなーとは感じるのだけど、深いところでたゆたうような、地に足の着いた音になっていると思えるので、違いは鮮明に感じます。一方でその感触は、ソロ名義でも、ソカバン名義でも出せないモノになっていることは間違いなく、サニーデイとして新作を出すことは、それだけでも意味のあったことなのだと感じられ、ただの気分で再結成したわけじゃないんだなと、正直ほっとしました。また、歌詞も同じような印象で、フィルターを通したような淡い雰囲気の詩世界に、すごく懐かしい気分になりつつも、やはり最近のプライベートな感覚が(決して表には出ていないんだけど)あって、その世界観が、自分により近い場所で見えてくるような印象があります。そのために、この作品を、自分自身の日常だとか生活だとかに、強く投影してしまう結果にもなっている。「最近はそんなに音楽聴かなくなったけど…」みたいな、一種の郷愁でもって始まるレビューを多く見かける気がするのは、そんな理由なのかもしれません。
と思い入れを語ってはみましたが、正直に申し上げれば、今作はそこまで出来の良い作品とは言えないと思います。シンプルと言えば聞こえはいいけど、全体的にメリハリに欠けていて、特に中盤があっさりしすぎているとも思う。後半の、ソロっぽい作品がじっくり聴かせる内容だったというのも(一番好きな曲は M-8「Dead Flowers」です)、少し物足りなさを覚える。しかし個人的には、それでもいい作品だなと、しみじみとした気分になりながら、聴いていた。つまり、変わっていないことと、変わっていることが、両方ともあって、その絶妙なバランスに、私は感動を覚えているのだと(余談ですが、「SNOOZER #079」に久しぶりに登場した、加藤亮太のレビューは泣けました)。逆に、変わっていないことを期待していたり、昔を知らないが故に変わっていることを分からないと、そこまで響いてこないかもしれません。だから、前途明るい若人は「オッサンの懐古趣味全開音楽w」とか言ってくれていいと思う。「この良さが分かるには10年早いわクソガキw」と言い返せるようになりたい。
2010-06-04 Fri
■ [Music] The Electric Soft Parade "No Need To Be Downhearted"
★★★

ブライトン出身の4人組バンド、エレクトリック・ソフト・パレードによる2007年リリースの 3rd。
一聴してまず、音の感触がかなり変わったと思いました。以前までのアナログっぽい手触りから、電子音の使い方が印象に残るパキパキとした音作りに変化しています。一方で、ゆるいサイケ感のあるアレンジも再現されており(あくまでも「再現」という感じなので、これまでの感触とはやはり違うのですが)、特にギターは以前よりも際立って聴こえてくるように思います。バンドが出す音というより、宅録っぽさが若干あるかもしれません。曲調は、2nd を踏襲した形で、素朴さの向こう側から牧歌的に聴こえてくるようなのどかな感じ。速い曲もあったりと多少ながらもメリハリを効かせてて、しっかり作られている印象なので、これまでで最も完成度の高い作品という気がします。1st と 2nd の間に身を置きつつ、新機軸を打ち出そうとした感じとでも言えるでしょうか(単純に資金とかの問題かもしれませんが…)。
とはいえ、それが良い音楽になっているかというと、ちょっと疑問ではあります。彼ら自身の変化としては、それなりに興味深い方向に向かっているような気はするのですが、結果的にはインディーポップの型にがっちりハマッてしまったような印象があって、特筆すべき点もあまり思い浮かばないなというのが正直な感想でした。悪くはないのだけど、聴くそばから記憶がポロポロとこぼれ落ちてしまい、最終的には個々の楽曲がまるで印象に残っていないのは、私がボケてしまったからではないはず…(マニアックな聴き込みが足りないという自覚はあります)。
以上です。このバンド、実質は活動休止状態みたいですね(メンバーは Brakes 等、別バンドで色々と活動している様子)。各アルバム、それなりに聴かせる内容ではありましたが、最も印象に残っているのが、結局は 1st シングルの「Silent To The Dark」であったというのも、いささか残念であります。
2010-06-02 Wed
■ [Music] The Electric Soft Parade "The American Adventure"
★★★

ブライトン出身の4人組バンド、エレクトリック・ソフト・パレードによる2003年リリースの 2nd。
1st からの期待を持って次作を聴いてみましたが、ゆるやかな曲調はそのままに、サイケっぽい音の感触が弱まって、普通に耳なじみのよいギターポップになっていると感じました。メロディーは変わらず、多少ひねくれてはいますが、全体的に完成度が上がってよく出来たアレンジに仕上がっており、素朴な感じがよく出ていて、だいぶとっつき易くなったと思う。と同時に一方では、前作にあった不思議な味わいが薄まってしまったとも感じます。完成度の向上は、バンドとして正統な進化という気もしますし、決して悪い曲が並んでいるわけではないのですが、ギター等から感じられるプログレっぽい作りこみ感に、個人的にはちょっと退屈さを覚えてしまった。前作もそんな雰囲気はありましたが、より一層、玄人受けしそうな音楽になっている気がします。心をつかむフレーズで一発勝負するようなバンドではないので、たとえ入り口が入りやすくなっても、それ以上奥に進むのは逆にためらってしまうような印象がありました。
そんな感じです。前作のジャムっぽい気だるさが結構好きだったのですが、今作の、曲調はゆったりしていながらも、箱の中にきっちりと収められた感じの楽曲群には、がっつりハマれなかったというのが正直なところです。
2010-05-31 Mon
■ [Music] The Electric Soft Parade "Holes In The Wall"
★★★★

ブライトン出身の4人組バンド、エレクトリック・ソフト・パレードによる2002年リリースの 1st。
以前聴いた Brakes のメンバーがやっているバンドという繋がりで紹介されたので聴いてみました(こちらの方が有名なのかな?)。ゆったりとした渋い楽曲群で構成されたギターポップという感じで、とても良かったです。緩めの曲が並んでおりますが、サイケっぽいアレンジで不思議な雰囲気をかもし出しており、退屈さを抱かされることなく、最後まで飽きずに聴けます。昨今の過剰にサイケを押し出しまくるインディーロックと比べると、(強弱両方向ともに)迫力が足りないと言えばそうなんですが、楽曲自体は地味ながらもしっかりと作られているので(コーラスなども悪くない)、むしろうまく曲を引き立たせている要素のひとつとして感じられる。加えて、ギターが時折、ぐにゃりと歪みを見せたりもするので、結構捉えどころのない、面白い音楽になっていると思いました。とりわけ、9分越えの大作「Silent To The Dark」が、後半のポストロック的展開も含めて素晴らしいです。
そんな感じで、最初の印象はそこまで良くなかったですが、最終的にはかなり気に入りました。UK ロック的なお上品かつ叙情的な側面を持ちつつ、カンタンにはいかないぞという曲者感を併せ持った音楽だと思います。じっくり聴き込む度に新しい表情を見せる、スルメ盤ではないかと。次作も聴いてみます。
2010-05-26 Wed
■ [Music] Bad Lieutenant "Never Cry Another Tear"
★★☆

New Order のバーナード・サムナー率いる3人組バンド、バッド・ルーテナントによる2009年リリースの 1st。
メンバーが3人ともギタリストという、変則的な構成です。内容は基本的にニューオーダー直系の楽曲が並んでます。青臭いメロディーと、切なげなギター。そして間奏で炸裂する高音ベース…ではなく、そこだけがギターやシンセに変わっている、という感じ。かつて、ニューオーダーの復活作 "Waiting For The Sirens' Call" の1曲目「Who's Joe?」で、サビのメロディーとともに炸裂する高音ベースに号泣してしまった身としては、どうしても肩透かし感が強いです。結局、スティーブン・モリスも参加しているわけで、ニューオーダーからフッキーが抜けただけの陣容じゃないですか…。もちろん部分的にはそれに止まらず、新メンバーのジェイク・エバンスは結構よさげなギターを鳴らしているし、彼のボーカル曲も良いアクセント足り得ているのですが、(言い方は悪いけど)箸休めって感じの扱いを抜け出ておらず、やっぱりメインはニューオーダー色。であるが故に、どうしても物足りなさを感じてしまいます。前から思っているのですが、バーニーのボーカルは、ギターサウンドとの親和性は高いと感じる一方、その調和が良すぎて聴き心地だけがアップした結果、取り立てて印象に残らない音楽に成り下がってしまっているとも思うのです。(例えばエレクトロニックなどの)フッキーが参加していない音源を聴く度に、ギターと高音ベースはやっぱり別物だという思いが強くなる。そして、あの音が待ち遠しくなってしまうのです。という感じで、良い曲もちらほら散見されるものの、満足出来る内容ではありませんでした。
というわけで、ファン以外聴かないであろう作品だと思うので、思いっきり偏った目線で心境を吐露してしまいました。それにしても、フッキーの新バンド Freebass にベーシストが3人いるのを見て、あんたら何してんのと思わず苦笑する。そんなことで張り合わなくていいから、とっとと仲直りして再結成してください。


